【プロパガンダの過去と現在】「戦争法案」騒動で弱腰に終始した大手マスコミ。その裏には権力によるプロパガンダの歴史が深く横たわっている。
「たのしいプロパガンダ」辻田真佐憲著
プロパガンダと聞くと恐ろしげな洗脳を連想するのは実は間違い。なぜならプロパガンダは敵に立ち向かう国民が心を高揚させ、欣喜雀躍(きんきじゃくやく)しながら盛り上がっていくものだからだ。本書はこんな立場で書かれた若手メディア研究家の著作。
たとえば昭和初期には海軍の現役軍人が宝塚歌劇に原作を提供した「太平洋行進曲」があったし、ロシア民謡の「カチューシャ」は田舎娘が恋人のソ連軍兵士を思う歌詞で国民に戦争宣伝をしていた。現代日本では百田尚樹の「永遠の0」などの「右傾エンタメ」や自民党がユーチューブとニコニコ動画を利用して作った「教えて!ヒゲの隊長」アニメまでを取り上げて論じている。(イースト・プレス 800円+税)