老後を考える本特集
「脱出老人」水谷竹秀著
2010年の国勢調査でも、日本はひとり暮らしの単独世帯が1678万世帯、夫婦と子ども世帯を上回った。未婚率も上昇し、家族という単位で老人を支えるのは幻想になった。2012年には、65歳以上が4人に1人の割合になり、20年後には3人に1人と推計されている。
老老介護、無縁社会の日本に比べると、フィリピンの人たちはホスピタリティーにあふれ、大家族で子だくさん。生活費も安くてすみ、気候も暖かい。フィリピン女性を追いかけて日本脱出したものの、英語もタガログ語もできず無一文となった困窮邦人を取材、開高健賞を受賞した著者が、今回はフィリピン移住に人生を懸けた人々を追う。
19歳の妻と1歳の息子とスラムで芋の葉を食べて暮らす元大手企業サラリーマン、ゴミ屋敷で暮らしていた母をセブ島に住まわせる娘、90歳の認知症の母をフィリピン人メイドと介護する夫婦、孤立死を選んだ元高校英語教師など、国境を越えて老いを迎え格闘する人々のドキュメント。(小学館 1600円+税)