著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

“月並み”じゃない「月の満ち欠け」

公開日: 更新日:

「月とこよみの本」林完次著

 秋風に たなびく雲の 絶え間より 漏れ出づる月の 影のさやけさ
(百人一首/左京大夫顕輔)

 身近な天体だというのに、月に関して知らないことが多い。月初の「一日」を「ついたち」と読むのも「月」の振る舞い(「月立ち」)が語源だと、本書を通して知った。太陽暦の今日でも、月の名残はまだまだ消えないようだ。プロフィルによれば「写真家、天文作家。(……)星や月などの天体を地上の風景とともに写した叙情的な作品で独自の世界観を築く」とある。本書もその例に漏れず、著者自身による美しい月の写真をふんだんに使い、科学と文化・芸術の両面から「月とこよみ」の関係を解き明かす。

 全3章構成。1章は「月の基礎知識」。「こよみと旧暦」「月の誕生秘話」「月のプロフィール」などを平易に解説。「29日と12時間44分で地球を一巡りする」こと、英語monthが月の満ち欠けの「1サイクル」が起源であることなど、豆知識が効いている。

 2章「月の満ち欠け」は本書の中核をなす。1日目「新月」から30日目「三十日月」のうち、16の月齢を選び「呼称」を解説。三日月、上弦の月、十六夜、立待月、下弦の月、有明月……。また、「球体である月が均一な明るさで輝く理由」など、随所のエピソードが好奇心をかき立てる。各月4ページ立て。うち1ページは月の写真を目いっぱい大きくレイアウト。淡いモノトーンから濃いオレンジ色まで、月光の「色の多彩さ」に今更ながら驚く。最後の1ページは太陽、地球、月の位置関係を図解。その夜、月がなぜそういう姿に見えるのか、一目瞭然だ。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」