2キロの重みは“ダテ”じゃない
「Ballet」写真・Henry Leutwyler
実際手に取って本書を鑑賞し終えた読者は、いろいろな意味で「身体」について考えさせられるだろう。
マイケル・ジャクソンの遺品を撮影した著名カメラマンによる、ニューヨーク・シティ・バレエ団の写真集。2012年冬、バックステージへの立ち入りを許された写真家は普段、目にすることのない「現場」に赴く。全4部構成。躍動的なレッスン風景、踊り手の表情のアップ、楽屋でのメークの様子、舞台袖、袖から見たステージ、衣装部屋、ばんそうこうやにじんだ血の痕が痛々しいダンサーの足、使い込まれたトゥシューズ……。ひたすら写真の連続。文字要素はキャプション(説明文)はおろか、ノンブル(ページ番号)すらない。
電話帳を1回り大きくしたサイズ。束(厚さ)43ミリ。上製、かがりとじ、布クロス装、三方金、背表紙にタイトルの金箔押し、表紙に別刷りの写真を貼り付け、と豪華だ。量ってみると約2キロ。重厚な造本はこの版元のお家芸、まさに圧巻だ。
紙面に目を戻すと、モノクロとカラーが混在。一見、白黒の写真も4色刷り。やや青みがかったトーンに調整してある。本文用紙は上質系。「テカリ」がなく、全編落ち着いたマット調。沈みがちな色味を補うべく、印刷現場でインキを「モリモリ」に盛ってある。その証拠に、本書を開くとインキの香しい刺戟が鼻を突く。