「人間臨終考」森達也氏

公開日: 更新日:

「僕が実際に会った信者は心優しい穏やかな人ばかりです。なぜ彼らがあれほどの事件を起こしたのか、組織の病理という問題を考えていけば、当然ナチスに行き当たるわけです」

 アイヒマンについては最近、哲学者アンナ・ハーレントを描いた映画で話題になった。

 アンナは学者として、アイヒマンは狂信者ではなく凡庸な人物だったと結論したのだが、それは社会に受け入れられなかった。それが日本社会のオウム問題のとらえ方と似ているという。

「組織に入ると主語が〈僕〉とか〈私〉という一人称ではなくなって、〈我々〉になっちゃう。そうなると当然、述語も変わる。日本は世界一ベストセラーが生まれやすい国で、みんなが読むから自分も読む。そういう傾向がとても強い国ですから、組織の間違いを起こしやすい」

 それは組織の末端にいる者だけではなく、組織のトップにいた者も同じなのだ。

あのアイヒマンでさえ、私は命令に従っただけだと。じゃあ、責任はヒトラーにあるのかといったら、ヒトラーはホロコーストを一切指示していない。同じことがオウム真理教にも言えて、麻原彰晃はサリンを撒けとは言っていないんですよ。周囲が上の者の気持ちを忖度して行動し、上の者もそれを褒めなくてはいけないと考える。上も下も組織の中ではお互いに忖度し合い、〈私〉がなくなるんですね。人間は群れに馴染みやすい生き物ですから」

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる