【バブル再来?】株式大連騰でささやかれる「バブル再来」とそのリスク
「今そこにあるバブル」滝田洋一著
今年6月、1単位の価格が3000ドルを超えたビットコイン。年初に比べると実に3倍の伸びだ。こんなエピソードから始まる本書は日経新聞編集委員による「新たなバブル現象」解読。
都心の一流ホテルが大ディスコパーティーを企画し、地方の豪華寝台列車旅行が飛ぶように売れる。タワーマンションは五輪前の駆け込み需要で高層階ほどよく売れる。AIファンドに流れ込む個人マネー。米国では自動車サブプライムローン問題が発生しているが、住宅に比べるとけた違いに影響は小さいと市場は気にしてない。
だが、それでもなお中間層にはデフレ心理が染みついて離れない。いまや社会の中核を占めるのは「バブルを知らない子どもたち」。彼らは就職氷河期の就活世代で、上の世代とは意識がまったく違う。
国際的に見ると日本だけが周回遅れの金余り現象を起こし、実体経済に対してマネーだけが過剰な事態を引き起こしている。ここで急ブレーキを踏むことはできないが、回収の見込みの乏しい事業に余剰をつぎ込むと二度と立ち直れないダメージを負う。衆院選の自民大勝で政治的安定は得たとはいえ、ひとつ間違えば国債のリスクプレミアムは跳ね上がり、「褒め殺しの円高」が復活すると警告している。
(日本経済新聞出版社 850円+税)
「経済成長主義への訣別」佐伯 啓思著
経済学者という以上に思想家としての知名度と影響力を持つ著者は問う、「果たして経済成長は人を幸福にするのか」。デフレ、バブル、ゼロ金利など何の話でも評論家や学者は必ず「経済成長」を絶対視するが、日本は既に「豊かな社会」に到達し、これ以上の成長を求めれば「ふつうの生活」が破壊されると警告する。
ではなぜ成長重視はダメなのか。著者は古今の経済理論をかみ砕いて説明し、話し言葉でわかりやすく講義する。おそらく著者のなかでは一般向けの啓蒙書として最もこなれたものといえよう。バブルがはじけた後も「成長の夢」を捨て切れない日本社会へのあわれみの書だ。
(新潮社 1600円+税)
「1985―1991東京バブルの正体」昼間たかし著
1985年から91年まで東京一極化を一気に進めたあのバブル現象を紙上で再現する。著者は75年生まれのルポライター。子ども時代にバブルを目撃し、大人になったらはじけていたというスキマ世代だ。それだけにバブル期への郷愁と憧れが行間からわき上がってくる。
特に熱が入るのが89年。流行はDCブランドとボディコンから渋カジへ変化し、合コンはシステム化され、深夜テレビでは「イカ天」が大ヒット。皮肉だったはずの「24時間戦えますか」のコマソンは労組のイベント歌(!)になっていたという。やがて起こった宮崎勤事件。皮肉にもこれが、バブル崩壊後の日本が唯一売り物にした「クール・ジャパン」の源であるオタク文化を浮上させたのだった。
(マイクロマガジン社 920円+税)