「ノーマンズランド」誉田哲也著
主人公は、親しくなった人が次々と亡くなることから「捜査一課の死神」という異名をつけられている姫川玲子。7カ月前の「祖師谷二丁目母子三人強盗殺人事件」の捜査中に殉職した前統括主任・林のことがいまだ頭から離れず、立ち直れないでいた。そんな彼女のもとに、葛飾署管内で起こった女子大生殺しの捜査が舞い込んだ。しかし、容疑者として浮かび上がってきた男は、別の殺人事件の容疑者として本所署に留置中。何やらこの事件には、一筋縄ではいかない大きな事情が隠されているようだが……。
本書は、テレビドラマ化されて累計で400万部を突破した人気の姫川玲子シリーズの最新作。今回は、姫川が追う事件と並行して、ある女子高生の失踪事件が女子高生と交際していた男性の目を通して語られる。読み進めるにつれて、ふたつの事件の接点が明らかになり、昨今の国際事情ぬきには語れない思いがけない結末へと収束していく。人の死に何度も直面しつつ何とかそのトラウマを克服しようとする主人公と、いなくなった女子高生を命をかけて捜し続ける男性の心模様がなんとも切ない。
(光文社 1600円+税)