生き物の不思議な生態がわかる本特集
「生きものの世界への疑問」日高敏隆著
「ざんねんないきもの事典」(高橋書店)が、累計発行部数120万部超えという、動物ものでは異例の大ヒット中だ。
動物たちのちょっと残念な生態を紹介したものだが、他にも動物をいろいろな角度から紹介した本がある。
今週は、さまざまな生き物とその不思議な生態を知ることができる5冊をご紹介。
著名な動物行動学者による生き物エッセーの復刊。
関東以西に生息する秋のチョウ「ウラギンシジミ」は、実は夏にも目立たぬ姿で山に現れる。越冬したチョウがフジの実に卵を産むのだ。この美しいチョウは産卵のため花を訪ねるが、自らは花の蜜を口にすることはない。実は獣のフンや熟した果実など、その美しい姿からは想像できない「下品な」ものを好むのだとか。中学生の頃、熟した柿の実にとまるウラギンシジミを狙って捕虫網を構えていたら柿泥棒に間違えられたエピソードなどを交えながら、その生態を紹介する。
その他、驚きの結果がもたらされるチンパンジーの認識力を調べる実験、友人の研究者から聞いた暗闇で獲物のネズミを耳で「見る」フクロウなど。
読者を生き物たちの世界の謎と不思議に導く。
(朝日新聞出版 740円+税)
「いきもの人生相談室」今泉忠明・監修、小林百合子・文、小幡彩貴・絵
いろいろな動物たちが、人間の抱えるお悩みに親身になって答えてくれる異色人生相談。
「お金があるとすぐに使ってしまいます。アラフォーなのに貯金ゼロで将来が不安です」という38歳女性のお悩みに答えるのは貯蓄(食)の鬼「ニホンリス」。「僕だってあればある分だけ食べたいという衝動にかられます。そこで編み出したのが、とにかくあちこちに貯食する『分散型貯食』。人間でいえば、いくつかの口座に分けて貯金する感じでしょうか」とアドバイス。
他にも、「家で妻が口をきいてくれません。倦怠期の乗り切り方を教えて下さい」という46歳男性の悩みには鳥界きっての愛妻家「オオハクチョウ」が答えるなど。人間社会よりもハードな野生の世界で生きる動物たちの名&珍回答に人生の生き抜くヒントを学ぶ。
(山と溪谷社 1200円+税)
「キモかわいい。かわいいけど、やっぱりキモい!いきもの図鑑」マガジンボックス編集部編
長い進化を経て、そうなった理由があるのだろうが、世の中には常識を超えた変な生き物たちがいる。人間から笑われたり、気持ち悪がられたりしながらもけなげに生きる動物たちにスポットを当てた写真ムック。この世のものとは思えないイソギンチャクのような赤い鼻を持つ「ホシバナモグラ」。その性能は素晴らしく、鼻で周囲の土を1秒間に10~12回も連打しながら獲物を探し、水中でもニオイを感じられるのだとか。
その他、深海で大口を開けて獲物を待つ「オオグチボヤ」や、鮮やかな水色の睾丸と真っ赤な性器の組み合わせがシュールな「ベルベットモンキー」、もはや宇宙人としか思えない「ホネクイハナムシ」などの深海生物まで。ドアップのカラー写真とユニークな解説で、キモカワ生き物を紹介。
(マガジンボックス 800円+税)
「ぬまがさワタリのゆかいないきものマル秘図鑑」ぬまがさワタリ著、柴田佳秀生物監修
人間に裏表があるように、動物にだって裏の顔がある。そんな動物たちの知られざる驚きの生態やエピソードを紹介する面白イラスト図鑑。
例えばカバ。ゾウの次に体が大きい草食動物で一日の大半は水中ですごしているというのが誰もが知るオモテの姿。そののんびりとした温厚なイメージとは裏腹に、実はカバはアフリカで最も危険な動物の一種で、襲われて亡くなる人も多いのだとか。3トンもの体重と、150度も開く口のかむ力は1トンに及ぶ。さらに走る速さはボルトよりも速い時速40キロだというから驚きだ。
その他、実は肉も食べるというパンダや、カバよりもさらに速い時速50キロで走るカピバラ、哺乳類の中で唯一「毒針」を持つカモノハシなど。100種近くの動物たちの意外な姿にビックリ。
(西東社 900円+税)
「ほぼ命がけサメ図鑑」沼口麻子著
サメをこよなく愛する自称「シャークジャーナリスト」によるサメ図鑑。現在、地球上で確認されているサメは509種。魚類最大サイズのジンベエザメから手のひらサイズのツラナガコビトザメまで、生息域も生態も「百鮫百様」というほど多様性に富み、分からないことだらけだという。
まずはQ&Aでその生態を解説。何よりも、「人食いザメ」は誤解で、サメに襲われて死亡する確率は、落雷で死ぬよりもはるかに低いと説く。サメが人にかみつくのは、サーフボードに乗ったサーファーを好物のアザラシやウミガメと間違えるからだという。
後半は深海魚漁の漁船に乗ったり、海に潜ったりして出合ったり、そして時にはその味を確かめたりと、「体当たり」して知り得たサメの魅力を余すところなく伝える。 (講談社 1800円+税)