「失敗図鑑」大野正人著
中間管理職による若者評のひとつが「失敗を恐れて、自ら動こうとしない」というもの。自分の子供をそんな若者にしないために、夏休みに一緒に読みたいのが本書だ。
歴史に名を残した偉人たちの失敗と、その失敗から彼ら彼女らがどうやって復活したかを紹介する異色の人物図鑑である。
例えば、大谷選手の二刀流の大先輩であるベーブ・ルース(1895~1948)。彼はとんでもない不良少年で、7歳で喫煙、飲酒に加え、警官を挑発するなど、手に負えない悪ガキで、手を焼いた両親に更生施設に入れられてしまう。しかし、7歳から19歳まで過ごしたこの施設で出会ったマシアス神父に野球を教わり才能が開眼。そして19歳のときに、その才能を見いだされ、大リーグにスカウトされた。
文学史に残る数々の名作を執筆した小説家のドストエフスキー(1821~1881)は、なんとルーレットにのめり込み、出版社に借金までしていたギャンブル狂。
もしかしたらドストエフスキーはギャンブルを通じて人間のきたない部分を見ることができていたのかもしれないと著者はいう。
その他、信じられないことだが自分の容姿に大きなコンプレックスを抱いていた大女優オードリー・ヘプバーン(1929~1993)や、奇行が行き過ぎた結果、潜水服を着て演台に立ち、危うく窒息死しそうになった画家のダリ(1904~1989)、支援者が援助してくれた研究資金を遊びに使いきってしまう細菌学者の野口英世(1876~1928)など。20余人の偉人が登場する。
誰もが知るその偉大な業績の裏で、偉人たちが起こしていた人間くさいエピソードに、ちょっと自信と勇気とやる気が湧いてくるお薦め本だ。
(文響社 1200円+税)