「ジェット・セックス」ヴィクトリア・ヴァントック著 浜本隆三、藤原崇訳

公開日: 更新日:

 若く美しく、未婚で、身なりがきれい、細身で魅力的、知性的で高学歴、白人で異性愛者、そして愛情深い――かつてのアメリカのスチュワーデスには模範となる完璧な女性像が投影されていた。白人という項目を除けば、日本人のスチュワーデスに対するイメージも同様だろう。では、そうしたイメージはいつ、どのように形成されていったのか。本書は、数百人の元スチュワーデスの聞き取りを通してその歴史をたどったもの。

 世界初のスチュワーデスが誕生したのは1930年。採用された8人はいずれも看護師資格を持ち、当時の飛行機の天井は低かったため、身長は163センチ以下、年齢は20~26歳、体重は53キロ以下。看護師ならばホスピタリティーの面でもいざというときにもうってつけ。この看護師資格の条件はやがて外され、第2次大戦後になると、理想のお嫁さん候補、主婦像の空飛ぶ化身といったイメージが付与される。国際路線が拡大し、ソ連との冷戦が始まると、資本主義の先兵としての役割を果たし、60年代末からの性革命の時代にはセックスシンボルとして注目を浴びるようになる。

 そうしたイメージ戦略が進展していく陰で、さまざまな問題が派生する。第1に人種問題。白人のみの規定を破り黒人スチュワーデスが誕生するには長い時間が必要だった。次いで年齢制限の撤廃、結婚後の就労の確保、さらには体重制限(この苦労は多くの人が語っている)と容姿に関する規制の緩和等々。華やかなイメージの陰で、後のフェミニズムに連なる諸問題の最前線にいち早く立ち会ってきたのが彼女らだった。フライトアテンダント(日本ではCA)と中立的な呼称ではなく、あえてスチュワーデスと女性性を強調した本書の意図がここにある。 <狸>

(明石書店 3200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    都知事選2位の石丸伸二氏に熱狂する若者たちの姿。学ばないなあ、我々は…

  2. 2

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  3. 3

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 4

    竹内涼真“完全復活”の裏に元カノ吉谷彩子の幸せな新婚生活…「ブラックペアン2」でも存在感

  5. 5

    竹内涼真の“元カノ”が本格復帰 2人をつなぐ大物Pの存在が

  1. 6

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  2. 7

    二宮和也&山田涼介「身長活かした演技」大好評…その一方で木村拓哉“サバ読み疑惑”再燃

  3. 8

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 9

    小池都知事が3選早々まさかの「失職」危機…元側近・若狭勝弁護士が指摘する“刑事責任”とは

  5. 10

    岩永洋昭の「純烈」脱退は苛烈スケジュールにあり “不仲”ではないと言い切れる