「レスラーめし」大坪ケムタ著
あのレスラーは何をどれだけ食って大きく、強くなったのか。プロレスファンなら一度は思う素朴な疑問を、当事者たちに直球でぶつけたインタビュー集が登場。オカダ・カズチカ、小橋建太、前田日明、武藤敬司から天龍源一郎、長州力、藤原喜明、さらには女子プロレスラーも加えた15人が、若き日の食いっぷり、飲みっぷりを振り返る。話の端々に団体トップだったジャイアント馬場やアントニオ猪木の逸話も入り込んでくるわけで、これが面白くないわけがない。
プロテインなど使わなかった時代、“レスラーめし”の基本は相撲と同じく、ちゃんこ。相撲出身の力道山が導入し、定着したらしいが、若手時代は練習とちゃんこ番に明け暮れ、とにかく食べて体重を増やすことが求められた。ただし、相撲は魚介系ちゃんこが多いが、プロレスは圧倒的に肉。そして米だ。
「1日にご飯30杯くらい食べてたのに脂肪なんかつかなかった」(小林邦昭)
死ぬほど練習し、死ぬほど食べ、プロレスというハードな戦場で通用するカラダをつくるのである。特に新日本プロレスは、鬼軍曹の山本小鉄が「飯の食えないやつは田舎へ帰れ!」と、竹刀を片手に目を光らせていたという。どんだけキビシイんだよ!
ちなみに各レスラーの話を総合すると、ちゃんこ作りの名人は、キラー・カーン、藤原喜明あたり。酒豪となると、ウイスキーのボトルを一気飲みするような猛者揃いの中、多くがその名を挙げるナンバーワンは坂口征二か。
プロレスラーは特別な存在だと子供の頃から刷り込まれてきたが、本書を読んで納得した。みんな若き日に必死に食べ、練習したからこそ、40代や50代でリングに立つことができるのだ。
僕の思う最強レスラーは藤原喜明だ。今年70歳で、胃がんを克服し、今なお現役を張る。レスラーに定年はないのだ。
(ワニブックス1600円+税)