「マーダーズ」長浦京著

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 阿久津清春は28歳の商社マン。会社に戻る途中、路地裏から女性の悲鳴が聞こえた。駆け付けると、男がナイフで女を切りつけている。思わず止めに入ると、男の服からガソリン臭がする。そこへ相手の女が男にスタンガンを押しつけ、男は炎に包まれる――。

 いきなり緊迫感に満ちた場面から始まるが、これはほんの序の口。この女性、柚木玲美は清春をわざと事件に巻き込んだのだ。玲美は清春が殺人を犯したことを知っていて証拠も握っている。もし公表されたくなければ、19年前に死んだ母の死の真相と行方不明になった姉の居所を探ってくれという。

 玲美はかつて殺人事件を犯した兄の共犯と疑われたことのある則本敦子警部補の秘密も握っており、清春は敦子と一緒に玲美の依頼を遂行することになった。調べていくと、自殺とされた玲美の母は実は他殺であり、それと同じ手口による偽装自殺事件がいくつも発覚。時期も被害者の年齢・性別もバラバラの事件に共通するものとは?

 法では裁けない「隠れた殺人者」を巡って幾重にも張り巡らされた伏線が終盤意想外な形で結び付いていく。大藪賞受賞作家の渾身の犯罪小説。

 (講談社 1800円+税)

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