「満洲コンフィデンシャル」新美健著
昭和15年、憲兵を殴って海軍を追い出された元士官候補生・湊春雄は、満洲鉄道本社へ飛ばされ、神戸から船に乗り大連にやってきた。
到着したばかりの春雄を待っていたのは、その足で新京の満洲映画協会に行くという任務。表向きは記者として出向し、裏の任務は満鉄理事長の甘粕正彦の弱みを探れというのだ。
不服に思いながらも軍の機密だというフィルムを持たされて大連駅に向かった春雄は、西風と名乗る男に盗人につけられているから気を付けるようにとの忠告を受ける。軽薄そうな西風をうさんくさく感じた春雄だったが、西風の予言通りふたりの中国人にしつこくつきまとわれ、ついには拳銃をつきつけられる羽目に。執拗に追ってくる彼らから助けてくれたのは、伊達政宗の末裔という伊達宗敦と、信用できないはずの西風だった……。
2015年「明治剣狼伝西郷暗殺指令」で第7回角川春樹小説賞の特別賞と、第5回歴史時代作家クラブ賞文庫新人賞を受賞してデビューした著者の最新作。川島芳子、李香蘭ら、満洲という舞台に現れた人々の駆け引きを春雄の目を通してスリリングに描いている。
(徳間書店 1800円+税)