「モップガール」加藤実秋著

公開日: 更新日:

 清掃業務のひとつに特殊清掃というジャンルがある。事件、事故、自殺等の変死現場や独居死などによりダメージを受けた室内の原状回復や清掃を業務とする。本書には、そんな仕事とはつゆ知らず「高給優遇、初心者大歓迎、アットホームな雰囲気が自慢の職場です」という広告に引かれて飛び込んだフリーターが遭遇する奇々怪々な事件が描かれる。

【あらすじ】長谷川桃子は自分が輝ける場所を求めてフリーターを続けている22歳。新しいバイトの面接に臨んだのは「クリーニングサービス宝船」。犬アレルギーなのに大の犬好きの社長、売れない俳優ですぐに直近の役になりきる重男、フェロモン全開ギャルの未樹、そしてイケメンだが無愛想で正体不明の翔――いずれ劣らぬ変わり者揃いの奇妙な会社だ。しかも一部とはいえ特殊清掃の仕事も受けていると聞き、及び腰の桃子だが、妙な経緯から働くことに。

 いくらか仕事にも慣れてきた頃、桃子が殺害現場の清掃中に人形を模したテープに手を触れるとフラッシュバックに襲われ、断片的な映像が現れた。その後も同じ映像が繰り返し出てくる。その映像は殺人事件と何か関係があるのではないか。

 そう思った桃子は翔の手を借りて調べ始める。桃子は幼いときから左耳が聴こえなくなる難聴に悩まされており、翔いわく、その症状が表れるのとフラッシュバックは関係あるという。事実、その後桃子はいくつかの現場でフラッシュバックが起き、そのたびに翔と共に事件に巻き込まれていく……。

【読みどころ】お掃除+霊能力+ミステリーといった趣のちょっと風変わりのサスペンス。桃子を取り巻く個性豊かな面々との掛け合いが絶妙。北川景子主演でテレビドラマ化もされた。<石>

(小学館 619円+税)

【連載】文庫で読む傑作お仕事小説

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

    大谷翔平を激怒させたフジテレビと日本テレビ…もっと問題なのは、情けない関係修復の仕方だ

  2. 2
    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

    悠仁さま「東大合格」の逆風になりかねない宮内庁“3年前の痛恨ミス”…トンボ論文の信頼性に影響も

  3. 3
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  4. 4
    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

    「今市事件」服役中の勝又拓哉受刑者「『有希ちゃんを殺してごめんなさい』って50回言わされた」

  5. 5
    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

    ロッテ佐々木朗希 日本では「虚弱体質」の烙印も…米球団むしろプラス評価でゾッコンの理由

  1. 6
    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

    なぜ大谷はオールスターで「最多得票」を取れないのか…圧倒的成績を残しながら首位と26万票の大差

  2. 7
    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  3. 8
    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

    杉咲花&若葉竜也「親密報道」後も評価上昇 「アンメット」の演技にはゴシップを超える力がある

  4. 9
    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

    ドトールに注がれる「石丸効果」都知事選でヒモ付き隠さず3番手から猛追、株価も爆上がり

  5. 10
    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見

    まるで大使館…剛力彩芽&前澤社長の“100億円豪邸”を発見