「うたう生物学」本川達雄著

公開日: 更新日:

 生き物の形というのは、ざっくり言えばみな円柱形である。外側だけでなく、中にある腸も血管も、骨も神経もみな円柱形だ。なぜか。それは、円柱形は強いからだ。

 たとえば、葉っぱ。光を集める面積が広くて良いが、平たいとヘニャヘニャして姿勢が保てない。そこで、平たいものを円柱形にしてみる。すると上に物を載せてもつぶれない。だから幹と枝、そして葉脈も円柱形になっていて、姿勢を保っているのだ。

 円柱形は丸いから強く、そして長い。長ければ木なら背丈が高くなり葉をたくさん付けられて光合成量が増す。動物なら足を長くすれば一歩の歩幅が増えてより速く走れるようになる。体の部分部分にはそれぞれ意味があるのだ。

 ナマコ研究家にして、「ゾウの時間 ネズミの時間」で知られる著者がパーソナリティーを務める、ラジオ深夜便の人気コーナー「うたう生物学」を書籍化。生物のサイズ感や時間とエネルギーの関係を解説しながら、「通勤電車は虫かごなみ」「歳をとると1年が早く感じる理由」を紹介するほか、「ヒトデはなぜ星形か」など生物にまつわる面白コラムがズラリと並ぶ。生物学から見れば現代人の「棲息密度」や「直線的な時間のデザイン」は大きく逸脱、という指摘には改めて考えさせられる。

(集英社インターナショナル 1870円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁“”化けの皮”が剝がれたともっぱらも「業界での評価は下がっていない」とされる理由

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    僕の理想の指導者は岡田彰布さん…「野村監督になんと言われようと絶対に一軍に上げたる!」

  4. 4

    永野芽郁は大河とラジオは先手を打つように辞退したが…今のところ「謹慎」の発表がない理由

  5. 5

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  1. 6

    大阪万博「午後11時閉場」検討のトンデモ策に現場職員から悲鳴…終電なくなり長時間労働の恐れも

  2. 7

    威圧的指導に選手反発、脱走者まで…新体操強化本部長パワハラ指導の根源はロシア依存

  3. 8

    ガーシー氏“暴露”…元アイドルらが王族らに買われる闇オーディション「サウジ案件」を業界人語る

  4. 9

    綱とり大の里の変貌ぶりに周囲もビックリ!歴代最速、所要13場所での横綱昇進が見えてきた

  5. 10

    内野聖陽が見せる父親の背中…15年ぶり主演ドラマ「PJ」は《パワハラ》《愛情》《ホームドラマ》の「ちゃんぽん」だ