「偽装同盟」佐々木譲著
物語の舞台は、日露戦争終結から12年後の東京。敗戦後の日本は、外交権と軍事権をロシアに委ねることとなり、東京にはロシア陸軍の歩兵連隊とアムール・コサックの騎兵連隊が進駐。霞が関には統監府が設置され、多くのロシア人が東京の一角に移住してきていた。
そんなある日、警視庁本部刑事課捜査係の特殊巡査・新堂裕作は、連続強盗事件の捜査で重要参考人の杉原を確保しようとしたところ、ロシア統監府保安課のジルキン主任に阻止される。正式な抗議を申し入れるも、らちが明かない状況のなか、今度は外神田で女性の変死体が発見された。被害者の身元を調べるうち、被害者がロシア語学校に通っていたことやロシア語の新聞社に出入りしていたことなどがわかってくるのだが……。
日露戦争で日本が負けていたら、どんな社会になっていたのか。本書は、ロシア統治下の東京を描いた前作「抵抗都市」に続く、改変歴史警察小説第2弾だ。ロシアの属国と化した日本で正義を貫くことができるのか。ロシアが注目されている今、あり得たかもしれないもうひとつの大正の姿を描いた著者の視点が興味深い。
(集英社 1980円)