「テヘランのすてきな女」金井真紀著
「テヘランのすてきな女」金井真紀著
イランでは、女性はスカーフで髪を隠し、体のラインが分からないようチャドルを着る。街では風紀警察が目を光らせ、異性との握手が見つかれば99回のむち打ち。女性は保護者である男性の判断のもとで生きるべし--。本書は、そんな不自由で謎めいたイスラム教国家に生きる女性たちに会い、生の声をつづったインタビュー&スケッチ集である。
主婦エスマトさん(50歳)は、もう25年もチャドルを着ていないという。2人目を出産後、赤ちゃんを抱っこして着るのは大変だったのが理由だ。さらに5、6年前にはお祈りも断食もやめた。息子に「神様より人間を信じたほうがいい」と言われ、徐々に宗教から距離を置くようになった。知人に宗教観について話すことも聞かれることもないそうだ。
さまざまな制限があるなかで「先輩から引き継いだ自由を求める旗を私もつないでいく」と述べる弁護士、トランスジェンダーの3人の若者、移民の子どもに勉強を教える人、男の子のふりをしてサッカーをしていた女子代表監督など、「自分らしく」生きようとする女性が多く登場する。6割以上の女性が豊胸手術をするなど興味深い話もあり、女性たちをパワフルに感じると同時に痛みを抱えていることも浮かび上がる。人権とは何か、と考えさせられる一冊だ。
(晶文社 1980円)