「DV8 台北プライベートアイ2」紀蔚然著、舩山むつみ訳
「DV8 台北プライベートアイ2」紀蔚然著、舩山むつみ訳
元劇作家にして大学教授という異色の経歴を持つ私立探偵・呉誠が活躍する「台北プライベートアイ」シリーズ第2弾。本作では、台北から郊外の淡水に居を移した呉誠が、美人店主エマが経営する「DV8」というバーに根を下ろしつつ、そこで出会った人々から持ち込まれた事件を解決していく。
呉誠に会いにDV8にやってきた何琳安は、自身のパニック症候群の発作の原因を探るうちに幼少期にある事件現場に居合わせた際に助けてくれた男の子のことを思い出したことを語り、名前も覚えていない彼を捜してほしいと依頼。呉誠は、男の子を捜すべく彼女が遭遇した事件について調べるうちにとんでもない事実に行きあたる。さらに呉誠がすっかり惚れてしまったエマにも思わぬ騒動が持ち上がり、彼女にいいところを見せようと解決に乗り出すのだが……。
教養がありつつ心理的には繊細で、クールを装いつつも実は人一倍情が深い主人公が魅力的。エマとの恋の行方も読みどころだ。
90年代から変化の激しかった台湾事情も描写しており、台湾に興味がある人にもおすすめだ。
(文藝春秋 2200円)