著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「ムクウェゲ医師、平和への闘い」立山芽以子著 華井和代著 八木亜紀子著

公開日: 更新日:

「ムクウェゲ医師、平和への闘い」立山芽以子著 華井和代著 八木亜紀子著

 わたしは数年前から日本に住むコンゴ人にリンガラ語を習っている。と、いろんな人に自慢しているのだが、最近はリンガラ語教室の先生も生徒たちもすっかりサボり癖がついて、授業はしばらく開催されていない。それでもまだ見ぬコンゴ民主共和国に愛着が湧いて、かの地の音楽を聴いたり、サッカーの国際試合で同国代表(愛称はレオパード)を応援したりしている。そしてコンゴを語るとき、避けて通れないのがムクウェゲさんとその向こうに広がる悲惨な現実だ。できればこの地獄から目を背けたい。でもスマホを使っている以上、わたしも関係者だ。おそらくこの記事を読んでくれている皆さんもまた。

 コンゴ東部には多くの鉱物資源が埋まっている。スマホやゲーム機に使われるタンタルや電気自動車に使われるコバルト、それに金、スズ、タングステンなど。それらを奪おうと武装勢力が暗躍している。

「村々を支配、蹂躙するのに戦車や爆撃機は必要ない。女性をレイプするだけでいい」(ムクウェゲさんの自伝から)

 のみならず女性器を焼いたり、ナイフで切り裂いたり、銃弾を撃ちこんだりする。恐怖に支配された村人たちは、無抵抗のまま危険な鉱山で酷使され、鉱物資源は略奪されていく──。

 産婦人科医のムクウェゲさんはその場所に病院を建てた。そこで治療を受けたレイプ被害者は二十数年間で8万5000人以上。は、はちまん……。ことばを失う。自らも命を狙われながら女性たちを助け続けているムクウェゲさん。絶望の出口はどこにある? まずは知ることだと本書は説く。本を閉じ、自分のスマホをじっと見る。

(岩波ジュニア新書 968円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    元グラドルだけじゃない!国民民主党・玉木雄一郎代表の政治生命を握る「もう一人の女」

  2. 2

    深田恭子「浮気破局」の深層…自らマリー・アントワネット生まれ変わり説も唱える“お姫様”気質

  3. 3

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  4. 4

    粗製乱造のドラマ界は要リストラ!「坂の上の雲」「カムカムエヴリバディ」再放送を見て痛感

  5. 5

    東原亜希は「離婚しません」と堂々発言…佐々木希、仲間由紀恵ら“サレ妻”が不倫夫を捨てなかったワケ

  1. 6

    綾瀬はるか"深田恭子の悲劇"の二の舞か? 高畑充希&岡田将生の電撃婚で"ジェシーとの恋"は…

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    “令和の米騒動”は収束も…専門家が断言「コメを安く買える時代」が終わったワケ

  4. 9

    長澤まさみ&綾瀬はるか"共演NG説"を根底から覆す三谷幸喜監督の証言 2人をつないだ「ハンバーガー」

  5. 10

    東原亜希は"再構築"アピールも…井上康生の冴えぬ顔に心配される「夫婦関係」