1年分のストレス発散!最新プロレス本特集
「『プロレス スーパースター列伝』秘録」原田久仁信著
いよいよ今年もあと4日を残すのみ。1年間、お疲れさまでした。たまったストレスを今や恒例となったプロレスの大晦日興行で発散するのを楽しみにしている方も多いことだろう。そこで今年最後の本欄では、プロレス本を特集する。
◇
「『プロレス スーパースター列伝』秘録」原田久仁信著
著者は、かつて少年誌で人気プロレス漫画の作画を担当した漫画家。原作者の梶原一騎氏の指名で、当時新人だった著者が作画を担当したという。この伝説的漫画の制作の舞台裏を、今は亡き梶原氏の思い出を交えながら、エピソードたっぷりに紹介するエッセー集。
1980年から足かけ4年連載されたこの作品が多くのファンに愛された最大の理由は、「初代タイガーマスク(佐山聡)」の存在があったからだと著者は振り返る。タイガーマスクは元々は漫画から生まれたキャラクターで、その生みの親の梶原氏がアニメ版を盛り上げるために現実のタイガーマスクを新日本プロレスのリングに登場させたという。アニメの引き立て役だった初代タイガーマスクは、アニメ以上の人気を集め、それは梶原氏にも想定外の出来事だったらしい。
ほかにも、ブッチャーら漫画では虚実入り乱れて描いた名プロレスラーたちの物語の真実を明かす。 (文藝春秋 1760円)
「侍レスラーの反骨のプロレス熱闘記」越中詩郎著
「侍レスラーの反骨のプロレス熱闘記」越中詩郎著
デビューから45年、66歳の今も現役プロレスラーとして活躍する著者が、自らのプロレス人生を振り返った回想録。
高校卒業後いったんは就職したが、後悔なき人生を歩むためにプロレスラーを目指す。当時、入門は狭き門だったが、全日本プロレスを率いていたジャイアント馬場氏と面会する道が開け、合同練習への参加を許される。練習は過酷を極め、その厳しさを我慢したからこそ今があると振り返る。ジャンボ鶴田氏が寮長を務めていた合宿所に入り、入門から8カ月後にデビューを果たす。
その後、リングに立ちながら長く付け人として行動を共にした馬場氏や鶴田氏をはじめ、先輩レスラーたちのエピソードから、後に2代目タイガーマスクとなる三沢光晴氏とのメキシコ修業、さらに坂口征二氏に誘われ新日本プロレス移籍まで。
国内外の多くのプロレスラーとリングで死闘を繰り広げてきた氏の人生の軌跡が熱く語られる。 (青春出版社 1210円)
「1954 史論―日出ずる国のプロレス」小泉悦次著
「1954 史論-日出ずる国のプロレス」小泉悦次著
日本のプロレスは「力道山で始まった」といわれる。1954(昭和29)年、彼がシャープ兄弟を招いて挙行した日本プロレス旗揚げシリーズが大成功をおさめ、ブームを巻き起こしたからだ。
同年には日本初の女子プロレス団体「日本女子レスリング倶楽部」も誕生。エースで当時22歳だった猪狩定子が日本で最初の女子プロレスラーとされる。彼女のデビュー戦は同年11月に、来日したアメリカの女子レスラーの日本ツアーで、これがわが国で最初の女子プロレスの興行だった。
実は日本のプロレス興行は1887(明治20)年から、断続的に行われていたが定着せず、1954年は日本のプロレスが始まった年ではなく、根付いた年だという。
相撲出身の力道山や柔道出身の木村政彦、そして芝居一座の座員だった猪狩定子ら、黎明期のレスラーたちの軌跡を描きながら、戦後、プロレスがどのような経緯で輸入され、定着したのかを詳述するプロレス創成記。 (辰巳出版 2310円)
「証言 全女『極悪ヒール女王』最狂伝説」ダンプ松本、ブル中野、アジャコングほか著
「証言 全女『極悪ヒール女王』最狂伝説」ダンプ松本、ブル中野、アジャコングほか著
今年、話題となった配信ドラマ「極悪女王」の主人公は1980年代に「クラッシュ・ギャルズ」の対抗相手「極悪同盟」を率いて、空前の女子プロレスブームを巻き起こしたダンプ松本だ。
当時、彼女が所属した全日本女子プロレスには「ヒールはあくまでも縁の下の力持ち。ベビーフェースより目立ってはいけない」という鉄の掟があった。その掟を打ち破ったのが彼女だった。
ダンプ松本の引退後、ブル中野が全女のトップに立っても、ヒールの選手たちは、長年頭を押さえつけられてきた。
しかし、何代にもわたって悪役が鉄の掟を打ち破ったことで、ついにヒール同士の抗争で観客を集めるという女子プロレスの新しい歴史に突入。その新境地を開いた先駆者が、ブル中野とアジャコングだった。
本書はダンプ松本、ブル中野、アジャコングをはじめ歴代のヒールたちが当時を語る聞き書き集。 (宝島社 1870円)