再燈社書店(御茶ノ水)便箋、ご朱印帳など紙製品から、紙と親和性の高い本約3000冊まで
神田明神すぐ横のマンションの前。次々と足をとめ、ウインドーを眺める人たちがいた。なになに? 千代紙のような柄のカードや浴衣柄のような布カバーをまとったノートなど、ステキな和柄文具がディスプレーされていた。
「都内で商ってきた紙と紙製品の販売会社の、私は7代目です。ペーパーレス化がコロナ禍に進んだ今こそ、多くの人に紙の素材感に触れてもらいたいんです」と、店主の中村達男さん(41)。「紙の文化に再び火をともしたい」の思いを店名に込め、そうした紙製品と、紙と親和性が高い約3000冊を集め、2023年1月にオープンした。
さすが。15坪の店内は、「紙」の世界観に満ちている。メインの台に、えも言えぬ温かい色のミニカードとミニ封筒の数々。好みのカード8枚と封筒4つを選んで小箱に詰める、オリジナルの「はこか」だそう。蛇腹状に続く便箋や、表紙が和柄のご朱印帳もあり、それらを照らす明かりが「やわらかい」のは、本棚を区切る箇所にオリジナルの越前和紙が据えられているためのよう。
よくぞ選びぬいてくださったと、うなる本ばかり
さて、本棚。まず惹きつけられたのが「色」の本が並ぶ棚だ。面陳列された谷崎潤一郎著「陰翳礼讃」のほか、「青の図鑑」「いとエモし。超訳 日本の美しい文学」「宮廷のデザイン」。ついつい4冊とも手に取ってしまう。
「装丁がきれいな本が多いですね」と言うと、中村さんの顔がほころび、あちらの棚から「ウィリアム・モリス」「北欧の挿絵とおとぎ話の世界」など数冊を引いてきてくれた。いずれも、随所に箔押しのある、海野弘解説・監修のパイインターナショナルの本だ。本そのものが芸術品!
かと思えば、中村さんがちくま文庫の「三島由紀夫レター教室」を指し、「意外とこれもよく売れるんです」と。そういえば、「エッセイの書き方」「その日本語、ヨロシイですか?」といった本も先ほどから私に視線を投げている。
ほかにも、広く東京あるいは地元御茶ノ水、神田あたりを中心にした“街歩き”系、書店をビジュアルから紹介した系から、民俗学、考古学系に至るまで、「よくぞ選びぬいてくださった」と、うなる本ばかりだ。
◆文京区湯島1-2-12 ライオンズプラザ御茶ノ水1階/JR中央線・総武線御茶ノ水駅から徒歩5分/11~17時、不定休
ウチのベストセラー
「世界のふしぎな色の名前」城一夫、カラーデザイン研究会著 killdisco絵
「たとえば『スクールバス・イエロー』『ビリヤード・グリーン』は頭に浮かぶでしょうが、『霧につつまれた恋』『ガーター・ブルー』『エレファンツ・ブレス』なんかは想像できないのでは? 世界各地で生まれ、不思議な名前がついた166色の由来などを紹介した本です。各色にリンクするイラストもすてきで、プレゼントにも好適なためでしょうか。店内の複数箇所に置き、計50冊以上売れています」
(グラフィック社 2090円)