60本超上映…池袋・新文芸坐「戦後70年企画」で戦争を考える
戦後70年の今年の夏は例年以上に、“戦争”という言葉が重く感じられる。かつて「戦争が露出してきた」と言ったのは吉本隆明だが、今の状況は吉本の言葉を超えて「戦争」がもっと身近になっている。その「戦争」をじっくり考えることができるのが池袋・新文芸坐の今年の特集だ。
戦後70年企画として7月26日から始まった上映は3部構成。全部で60本以上の作品を上映するというから壮観だ。1部は「戦後日本の歩み」、2部「日本の戦争」、3部「戦後の風景」に分かれる。
なかでも、8月12日からスタートする2部は戦争映画のオンパレードだ。推薦作品としては「真空地帯」「軍旗はためく下に」「私は貝になりたい」「黒い雨」「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」「陸軍」「ひめゆりの塔」といったところか。
とくに深作欣二監督の「軍旗――」。南洋の島で追い込まれた日本兵の、人肉食まで言及される恐るべき描写もあり、今見ても身がすくむはずだ。戦争に翻弄された人々の戦後の荒廃ぶりは、「仁義なき戦い」をほうふつとさせる。
木下恵介監督の戦前の作「陸軍」も特別な作品である。田中絹代扮する母親が、戦地に向かう息子を必死に追いかけるラスト。息子を思う母の悲痛な心情を表現して今でも語り草だ。今なら安保法制反対のデモに参加している若い母親たちにとくに響く作品かもしれない。
かつての戦争映画には今を考える重要な視点がたくさんある。この機会を逃さないでほしい。
(映画ジャーナリスト・大高宏雄)