ベテラン俳優の瑳川哲朗さん 17年ぶり再演にかける意気込み
「70年代、ボクは新派や帝劇など商業演劇が中心。一方、彼はアングラ演劇でしたからね。ただ、彼が商業演劇に進出するかどうか悩んでた時に相談を受け、背中を押したこともあるんです。だから、初めて彼の演出に参加したロンドンでの『夏の夜の夢』(95年)はたまらなくうれしかった。もっとも、かなりしごかれましたけど、ハハハ」
以降、蜷川演劇には欠かせない役者になった。
瑳川さんは千葉・館山出身。早大仏文科を卒業後、劇団青俳を経て東宝演劇部に。67年のNHK大河ドラマ「三姉妹」での近藤勇役で人気に火がつき、同じくNHKドラマ「鞍馬天狗」でも近藤勇を演じ、“近藤勇=瑳川哲朗”が定着した。
「実を言うと、テレビにはあんまり興味なかったんです。大学時代は劇作家・福田善之さんの『長い墓標の列』って60年代安保を投影した作品の初演に出るなど、関心はもっぱら舞台に向けられてた。それがテレビで人気がドン! でしょう。正直、内心複雑でした。でも、おかげで父親の勘当は解けました。ボクは旅館の跡取り息子で、それにもかかわらず、芝居にのめり込んじゃって、仕送りをストップされちゃったんです。テレビを見た近所の人がボクを褒めるもんだから、父親もうれしくなったんでしょう、ハハハ」