「鉈の先に剃刀」 石丸謙二郎が語るつかこうへいの凄み

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 つかさんが投げつけてくる暴風雨のような凄まじい言葉のプレッシャーに圧倒されるんです。暴言なんてものじゃない。それまでの人生で身についた価値観、思考などすべてを否定される。まるで鉈の先にカミソリがついているような感じで切り刻まれるんですよ。

 それが毎日毎日でしょ? 当然へコみますし、稽古に行くのが嫌になります。しかも、芝居には台本がなく、“口立て”。つかさんならではの稽古方法なんですが、つかさんがセリフを言い、それを役者が同じように繰り返す。難しいですよ。活字を見られないわけですから。

 ところが、うまくできないと罵倒され、時には灰皿が飛んでくる。それが原因で逃げ出した役者はいっぱいいました。

 そんなふうにようやく「サロメ」を終えて、次が「いつも心に太陽を」。つかさんからのオファーでした。この作品には僕の他に平田満、風間杜夫、長谷川康夫らが出演していた。こちらが僕の役者としての初舞台といってもいいくらい、セリフも出番もありました。

 でも、さっき言ったように稽古がつらい。目が覚めると「また稽古か……」って気分が沈むくらい。それなのに、さんざん罵倒されたあげく「来なくていい!」でしょ。正直言って、精神的には最悪でした。

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