著者のコラム一覧
増位山太志郎元大相撲力士

1948年11月、東京生まれ。日大一中から一高。初土俵は67年1月場所、最高位は大関。引退は81年3月場所。引退後は日本相撲協会で審判部副部長を務めた。74年「そんな夕子にほれました」、77年「そんな女のひとりごと」などがヒット。画家として二科展入選の常連。「ちゃんこ増位山」(墨田区千歳)を経営。

<19>お宝は名刀「備前長船住景光」大阪相撲の曽祖父・玉の森から代々で刀好き

公開日: 更新日:

 僕はいろんなものの収集にも凝りました。一番は刀剣ですね。高価なので追っかけ始めたらお金が大変ですけどね。いいものになると何千万円もするものがありますから。

■かつて横綱の太刀は本身が入っていた

 日本刀は平安時代から始まりました。当時は太刀と言っていたわけです。横綱には必ず太刀持ちがついていて戦争中までは本身が入っていました。でも、あまりに重たいので、持っているうちに手がなまっちゃって、相撲に影響するので、竹光になったんです。

 刀好きは大阪相撲の母方の曽祖父の玉の森からですかね。祖父は岡山の人で、福男の裸祭りで有名な西大寺には玉の森の碑があります。新選組と戦ったという記録も残っているくらいだから、切った張ったの時代から刀とは縁があったということでしょうね。

 先代増位山の親父は戦前、若い衆の頃に大関五ツ嶋(1973年没)の付け人をやっていました。五島列島出身だから四股名が五ツ嶋。双葉山キラーとして有名でした。その五ツ嶋が刀好きで、地方巡業に行っては見つけて仕入れ、それを売って利ザヤで結構、儲けていたそうです。

 親父は五ツ嶋関に刀を担がされていました。戦中は軍人さんの慰問のため満州まで行ったそうです。

「なんでも鑑定団」鑑定士の親父さんから購入

 戦後、僕が生まれたのは親父が部屋を構えた新富町です。そこは元刀屋だった。土地を掘ったら刀が100本以上も出てきたそうです。進駐軍がまだ街を歩いている時代だから、刀を持っていることがわかったら、捕まるというので、刀をまとめて荒縄と交換したそうです。「もったいない」と嘆いていました。

 僕が持っているのは刀が8本、槍が3本、短刀3つです。どれも値のつけようがないものばかりです。

 鎌倉時代のものには長光、景光、金光の「三光」といわれる名刀があります。その中で僕が持っているのは真ん中の景光です。

「備前長船住景光」。備前の長船にはこれにしか出ない映り、刀の波紋があるんです。刀は下を白く曇らせて波紋が見えるようにしているけど、長船は白い曇りの上に本当の波紋が出てくる。それが映りです。見た目ではわからないけど、昔の赤い裸電球にかざすと、映りが見えてくる。最近になって刀剣を作っている人が再建したと聞いたけど……。どんなものか見てみたいですね。

 それから有名なのは刀剣の一大産地、山城(京都)の「来国光」が作った太刀です。来国光、来国行、来国俊、来国次の刀は来派といわれ、中でも来国光は刀好きには垂涎です。

 たぶん朝鮮半島から渡って来た人たちなので名前に「来」がついたと思います。国宝になっている刀が何本もあります。

 僕が持っている来国光はテレビの「開運!なんでも鑑定団」に出ている鑑定士の親父さんから買いました。=つづく

(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)

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