肺がん治療に前進もたらす「遺伝子異常退治」って何だ?
「有効性が高いと予測される薬があるのならば、患者へ治療薬を早く届けるために、その有効性を臨床試験で証明する必要があります。分子標的薬は対象が正しく限定できれば、非常に高い治療効果を発揮します。そういう思いから、全国の病院から遺伝子異常を有する患者をスクリーニングして、日本における治療薬の開発を推進するために、遺伝子スクリーニング組織をスタートさせたのです」
全国約200の病院から「LC-SCRUM-Japan」へ患者が登録され、遺伝子解析を行った結果、RET融合遺伝子を有する肺がん患者約20人が治験へ登録され、治験は無事に完了した。現在はバンデタニブの承認を目指してデータの解析が行われている。
「多数の遺伝子異常を一度に検索できる検査法も導入されています。遺伝子の検査というと過敏になる医療機関もありますが、現在検査している遺伝子の異常は親から子供に遺伝するようなものではないので、通常の血液検査と同様の扱いで問題ないと考えています」
分子標的薬による肺がんの治療は、この数年でも大きな進歩を遂げている。後藤医師らの大規模な遺伝子スクリーニングによって、将来的には「予想死亡数1位」でなくなる可能性は高い。
▽分子標的薬とは=がん細胞の表面の遺伝子やタンパク質をターゲットに攻撃する抗がん剤