甲状腺がんでの放射性ヨード内服治療は隔離して行われる
そんなDさんにとって、室内に備え付けられたテレビが唯一の友で入院中は淡々と過ごされたようでした。6日後、体内の放射線量が基準値以下となって退院が決まり、退院後は経過が良く、元気に過ごされています。
甲状腺は首の前側にチョウのような形で存在しますが、皮膚の上からは腫れない限り分かりません。甲状腺は血中にあるヨードを取り込んで、これを原料として甲状腺ホルモンを産生します。甲状腺ホルモンは体の代謝、維持にとても重要です。そのため甲状腺を全摘した場合は生涯、甲状腺ホルモン剤を飲み続ける必要があります。
■Ⅰ期・Ⅱ期なら手術でほとんどが完治
甲状腺がんはどうしてできるのでしょうか? 多くは原因不明ですが、一部に遺伝性のものもあります。また、チェルノブイリ原発事故の後、その近郊では甲状腺がんにかかる人が増えたといわれ、甲状腺がんの発生と放射線被曝線量が関係しているのではないかと考えられています。
福島原発事故では、大気中に放射性ヨウ素が放出されました。これが体内に吸収されて甲状腺がんを引き起こすことも心配されています。いろいろな議論がされていますが、5~9年程度の潜伏期間を経て、がんが増えることも考えられ、今後も注意深く見ていく必要があると思います。