“単身ベトナム遠征”で実施した手術が医療の発展につながる
■教育効果が大きい
海外で手術を行う場合、いちばん無難で安心できるのは、使い慣れた手術室をそのまま現地に“移動”させるパターンです。助手、麻酔科医、看護師といったスタッフはもちろん、機材や薬剤、消耗品なども丸ごと現地に運び、自国の手術室を“再現”するのです。
しかし、これでは現地の医師に対する教育効果がほとんどありません。彼らが普段行っているスタイルとはまったく異なるケースが多いので、手術に直接携わることはできませんし、ただ見学するだけになってしまいます。単純に「その患者の手術がうまくいきました」というだけで、現地の関係者が得るものはほとんどないのです。
「医療先進国にはこういう手術があって、こんなふうにやっているんだ。自分たちとは違う」といった感想を抱くだけで、強力なリーダーが医療体制を変革するくらいのことがなければ、その後の現地の医療は変わりません。来日する大リーガーのプレーを目の当たりにして感嘆していたかつての日米野球のようなもので、完全にショーで終わってしまうのです。