著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

英医学誌に注目研究 生活習慣病の薬と発がんリスクの関係

公開日: 更新日:

 論文の内容は、あくまでも疫学研究で、ACE阻害薬と肺がん発症の因果関係を証明するものではありません。しかし、データは英国の準公的機関の数値で、なおかつサンプル数が多く、追跡期間が長いので、信頼性は高いといえます。

 たかが疫学調査の結果を取り上げたのは、似たような状況がほかの薬で過去にあったのです。血糖値を下げる薬のひとつ「アクトス」(一般名ピオグリタゾン塩酸塩)とその合剤は2011年、フランスとドイツで新規患者への投与を禁止されました。長期の服用により、膀胱がんの発症リスクが高まる可能性があるとの発表を受けてのことでした。

抗がん剤白血病

 それから7年、その報告は論争を呼び、日本はもちろん、各国で検証研究が行われています。膀胱がんの発症リスクがあることを肯定する内容もあれば、否定するものもありますが、「否定できない」という見方でほぼ間違いないでしょう。

 アクトスや合剤が発売された当初、添付文書に膀胱がんに関連する記載はありませんでしたが、一連の検証作業を受けて厚労省はメーカーに添付文書の改訂を指示。両論が併記されるようになったまま記載が残っているのは、アクトスと膀胱がんとの因果関係が否定できない証拠といえるでしょう。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  2. 2

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  3. 3

    芸能界を去った中居正広氏と同じく白髪姿の小沢一敬…女性タレントが明かした近況

  4. 4

    中居正広氏、石橋貴明に続く“セクハラ常習者”は戦々恐々 フジテレビ問題が日本版#MeToo運動へ

  5. 5

    元横綱白鵬「相撲協会退職報道」で露呈したスカスカの人望…現状は《同じ一門からもかばう声なし》

  1. 6

    広末涼子が逮捕以前に映画主演オファーを断っていたワケ

  2. 7

    大阪万博メディアデー参加で分かった…目立つ未完成パビリオン、職人は「えらいこっちゃ」と大慌て

  3. 8

    容姿優先、女子アナ上納、セクハラ蔓延…フジテレビはメディアではなく、まるでキャバクラ状態だった

  4. 9

    「白鵬米」プロデュースめぐる告発文書を入手!暴行に土下座強要、金銭まで要求の一部始終

  5. 10

    エンゼルス菊池雄星を悩ませる「大谷の呪い」…地元も母校も同じで現地ファンの期待のしかかる