かつて患者が自主的に集まって合唱する「歌の会」があった
■昔に比べていまは"良い医療”が行われているが……
時代は大きく変わって、大病院では包括診療報酬制度となり、多くの検査は外来で実施され、クリニカルパスというスケジュールに沿って治療が行われ、入院期間はとても短くなりました。
がん拠点病院では、相談支援センターや患者サポートセンターなどが設置されています。多くの病院でクリスマスコンサートなどのイベントが計画され、また、がん種によっては患者会などもできました。今は、あの時代に比べるとはるかに進んだ“良い医療”が行われているのです。
しかし、患者が中心となり、患者が自主的に集まって歌う会は他にはあまり聞きません。このような歌の会の復活はとても無理なのですが、何かとても大切なものを、大切な仲間を失ったような気がしています。
事務のAさんが「再開する時のために」と残してくれた歌詞集が今も私の手元にあります。「ノスタルジア」だと嘲笑されそうですが、「どこかで春が」「みかんの花咲く丘」「あざみの歌」「里の秋」など、偶然、知らない患者同士が一緒に歌った曲目は658曲に上ります。