著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

【60代男性】高知は悪玉コレステロール以外は不健康偏差値が高い

公開日: 更新日:

年齢が上がるにつれて不健康格差は縮小する

 60代男性の上位3県は、順位に変動はあるものの、相変わらず沖縄県、青森県、秋田県の3県で占められている。

 1位の沖縄県でとくに目立つのがBMIだ。偏差値は103.8という、とんでもない数字になっている。BMIが30以上という肥満者は、全国平均で60代男性100人中3.2人だが、沖縄県は6.9人もいる。

 均偏差値に目をやると、1位と最下位の差が、50代、40代よりも小さいのが気になってくる。いま60代のひとは、50代、40代のころも、都道府県の不健康格差が小さかったのか。それとも年齢が上がるにつれて、格差は縮小されていくのだろうか。

4位の高知は悪玉コレステロールが少ない

 もし不健康状態が、年齢とともに、そのまま持ち上がるのであれば、10年後、20年後の都道府県間の不健康格差は、どんどん開いていくことになる。それは都道府県の平均寿命にも大きく反映されるはずだ。いまのところ、青森県を除く46都道府県の平均寿命格差は、1.6歳の範囲に収まっている(青森県だけは3.1歳の格差がある)。しかしその差がもっと拡大されるかもしれないわけだ。この問題については、もっと詳しく調べてみる価値がありそうだ。とりあえず今回は4位の高知県、7位の福岡県、10位の鳥取県に注目してみよう。

 まず高知県だ。LDLコレステロール以外の全項目で、不健康偏差値が60前後ある。バランスのよい不健康県と言えよう。高知県はサカナの消費が多い。とくにカツオの消費が飛びぬけている。サバやイワシなどには、LDLコレステロールを下げるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペタエン酸)が、豊富に含まれている。それらの栄養素は、実はカツオからも十分に摂ることができる。高知県のLDLコレステロールが低いのは、食生活の影響と考えていいだろう。

10位の鳥取はなぜか血圧が高い

 福岡県は、BMI(偏差値46.4)こそ低いが、ほかの項目はすべて高めで、高知県と同じくバランスのよい不健康県だ。とくにLDLコレステロールの偏差値が高い(65.9)。

 福岡といえば明太子が有名だが、それが原因だろうか。以前から、魚卵はLDLコレステロールや尿酸値を上げるから、あまり食べないようにと言われていた。

 しかしそれらの説には根拠がないことが分かり、いまはうるさく言われなくなった。だから福岡県のLDLコレステロール偏差値が高い理由は、別にあるはずだ。もつ鍋や豚骨ラーメンが原因かもしれないが、はっきりしたことは分からない。

 10位の鳥取県は、血圧の偏差値が高いことが特徴だ。偏差値75.5で、秋田県に次いで全国2位。50代男性100人中、7.4人が血圧160以上という結果になっている。しかしこれといった原因が浮かばない。

 鳥取県民の食塩摂取量は、全国平均よりやや高めだが、問題になるほどではない。健診で高血圧を指摘されても気にせず、病院に行かないひとが多いからなのかもしれない。γ‐GTPも高い(偏差値64.3)が、これも原因が分からない。

 鳥取県民の酒量は、全国平均並みなのだ。

45位静岡は血圧で"ワースト"2位

 下位からは、45位の静岡県をピックアップした。とくに血圧の偏差値が低く、全国で"ワースト"2位(34.9)となっている。お茶が効いているのかもしれない。緑茶には血圧を下げる効果があるし、静岡県は茶どころだ。だがLDLコレステロールだけが高く、偏差値は64.3もある(全国6位)。お茶にはLDLコレステロールを下げる効果もあるのに、奇妙な話ではある。

 しかし、静岡県出身の知り合いの内科医に聞いたところ「みかんの食べ過ぎ」という、意外な答えが返ってきた。みかんはビタミンCが豊富で、血糖値を下げる成分も含まれているので、適度に食べていれば健康にいい。だが食べ過ぎると、果糖のとり過ぎで、LDLコレステロールが上がってしまうのだそうだ。過ぎたるは及ばざるがごとし、ということか。

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