ケンカして「退院」を告げられた膵臓がんの患者の胸の内
以前、ある病棟を回診した時にこんな出来事がありました。
私はカルテを確認してから男性の4人部屋に入り、一人一人に「どうぞ頑張ってください」と声をかけました。3人の患者さんは、それぞれニッコリされて「はい」と答えてくれたのですが、窓側のベッドにいる4人目の患者Aさん(当時62歳)は、こう口にされました。
「先生、時々お腹が痛むのに、担当医からは退院しろと言われました」
私はすぐには返事ができず、「よかったら後でお話をお聞きしたいのですが、よろしいですか?」とたずねました。すると、Aさんは「はい」とうなずかれました。
それから2時間後、面談室にAさん、私、看護師の3人が集まりました。Aさんは進行した膵臓がんで、がんを切除する手術は無理と判断され、今回は腹痛を繰り返していたための入院でした。
Aさんはこんな話を続けました。
◇ ◇ ◇
実は、廊下側のCさんとケンカになりました。