ケンカして「退院」を告げられた膵臓がんの患者の胸の内
どうせ、私の命はもう長くないでしょう。死が近くに迫ってもケンカとは……。でも、まだケンカする元気があるんですよ。何か私の人生そのもののようです。Cさんとはそりが合わないのです。あの人もすぐにカッとなる人でしょう?
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しばらく沈黙が続いた後、私は「体の調子が悪いと気持ちも大変ですよね。イライラする気持ちわかります。早く良くなるように、どうぞ頑張ってください」と言葉をかけました。そして、看護師からは「それではAさん、もうケンカはしないでね。廊下側の方がトイレが近くて、夜、他の患者さんに迷惑になることが少ないと思うし、場合によっては廊下側に代わってもらいますからね」との注意がありました。
うなずいたAさんは、さらにこんな話を続けます。
「先生、そういえば、私は猫を1匹飼っていましてね。生まれたばかりの時に拾ってきて、しつけはしっかりしています。ウンチもおしっこも自らトイレに行って済ませますよ。でも今回の入院で、そのまま放してきました。勝手に外にも出られますが、食べ物はどうしているのか……それを心配しています」