なぜ国産の新型コロナワクチンの開発は遅れているのか?
国内での新型コロナウイルスのワクチン接種を巡っては、米ファイザーとモデルナ、英アストラゼネカの3社が決まっている。一方、国産ワクチンは開発に出遅れており、実用化のめどは立っていない。約40年にわたりワクチン開発に従事している奥田先生に聞いてみた。
Q:なぜ国産の開発は遅れているのか
A:「そもそも国産ワクチンの生産が遅れているのは、日本には研究設備もワクチン研究者も足りないからです」
国内の製薬会社で治験に入っているのは2社だ。先行しているのが、「アンジェス」で、大阪大などと共同で開発している。今年3月までに国内の治験で500人に接種する方針で、その後、海外を含め数万人規模の最終治験を実施する予定だ。
もう1社が、「塩野義製薬」で、こちらは年末までに3000万人分の生産体制を整える方針。昨年12月から200人以上を対象に治験を始めているが……。
「ワクチン開発は、その過程で病原体を取り扱います。そのため、安全性が確保された実験室を使用するのですが、その数は限られています。また、実験室はウイルス危険度によってP1~4の段階がありますが、防護服の着用や排気方法に規制のある封じ込め実験室であるP3(鳥インフルエンザ、SARSウイルス、ヒト免疫不全ウイルスなど)で稼働中なのは東大や阪大など20カ所余り。さらに高度な封じ込め実験室となるP4(エボラウイルスなど)で稼働中なのは現在、国立感染症研究所(感染研)しかありません。全国に複数点在するのはP2(インフルエンザ、C型肝炎、デングウイルスなど)と呼ばれるタイプで、人や動物に対し、病気を起こす可能性の低い微生物や起こしても重大な影響を与えない微生物を扱うことができる実験室なのです」