アウトドアブームで要注意の「毒虫」はマダニだけではない
このヒルはその名のとおり山奥にしか生息しない珍しい生物だったが、1990年ごろから全国的に増え続けている。狩猟制限などにより、野生動物が増えたことが原因だ。
「とくにシカはヤマビルにとって格好の餌食であると同時に、便利な移動手段でもあります。いまや首都圏でも、房総半島や神奈川県の丹沢山地などが、広範囲にわたってヤマビルの生息域になっています。彼らは普段、枯れ葉などの下に隠れていますが、人が近づくと、呼気の二酸化炭素や体温、振動に反応して、急いで出てきます。そして靴や衣服の中に潜り込み、食事(吸血)を始めるのです」
ヤマビルの唾液にはヒルジンという物質が含まれている。血液凝固を防ぎ、しかも鎮痛作用があるため、吸血されてもなかなか気づきにくい。
「彼らは30分以上かけてゆっくりと食事をし、満腹になると離れていきます。一方、吸血されたほうは、傷口にヒルジンが残っているため、血がなかなか止まらず、ジワジワと出血が続きます。トータルの出血量はせいぜい数㏄と、大したことはありません。しかし、血液が汗などの水分でのばされると、大量出血のように見えてしまいます。靴下やTシャツが血まみれ状態になって、大騒ぎになるというわけです」