著者のコラム一覧
永田宏長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。

セアカゴケグモ 原産地の豪州でも1950年代以降死者はゼロ

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 重症化するのは、その中のさらに数%に限られます。耐えがたいほどの痛みが数日も続く患者には、馬から作った抗血清が使われることがあります。馬にセアカゴケグモの毒を注射して抗体を作らせ、それを精製して患者に打つのです。

■血清開発が行われるが鎮痛剤で良いとの声も

 ところが、10年ほど前からオーストラリアの研究者や医師の間で「抗血清はあまり効果がないのではないか」と言われるようになってきました。アナフィラキシー(発生率約3%)や血清病(同10%)のリスクもあるので、むしろ使わないほうがいいという意見が強まっています。

 先ほどの王立メルボルン子供病院のガイドラインにも、「抗毒素の効果を支持する強力なエビデンスはない」「まずアセトアミノフェンや麻薬系の鎮痛剤で痛みの治療を行え」「抗血清を使う際にはリスクとベネフィットについて患者や家族と話し合うように」と明記されています。

 日本国内では、従来はオーストラリア産の抗血清が使われてきました。1995年から2017年までに病院で治療を受けた人は84人、そのうち7人に抗血清が使われたといいます。しかし近年、オーストラリア政府が抗血清の輸出規制を強化したため、現在は入手困難となっています。そこで、国産の開発が国の研究費を使って進められているところです。すでに試作品はできているようですが、まだ一般病院で自由に使えるようになっていません。

 いまはセアカゴケグモに咬まれても、抗血清の治療は受けられないかもしれませんが、対症療法だけで十分という専門家もいます。あまり心配する必要はないでしょう。

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