空腹ホルモン「グレリン」はがん治療と大きく関係している
■抗がん剤との併用で体重減なく治療可能に
まったく逆の話になりますが、がんが進行すると食事が取れなくなり、痩せて動けなくなることが少なくありません。この場合、エネルギーとなる栄養不足は深刻です。経管栄養、胃ろう、中心静脈栄養といった対策はあっても、適応になる方は少ないのです。
実は、胃から出る空腹ホルモン=グレリンと同じ作用がある「アナモレリン」という薬があります。これが今年の1月に「悪性腫瘍(非小細胞肺がん、胃がん、膵がん、大腸がん)におけるがん悪液質」に対して保険適用となりました。がん悪液質とは、がんに伴う体重減少や食欲不振で体の一般状態が悪くなり、生活の質(QOL)が落ちている状態です。アナモレリンは、がん悪液質の患者さんにおける体重および筋肉量の増加並びに食欲の増加効果が示されたのです。
また、このアナモレリンの内服により、抗がん剤との併用で体重が減らずに治療ができたという臨床試験の結果が報告されています。
一般状態が良く、体力のある患者は抗がん剤治療に耐えて頑張れます。しかし、体力がなく食事が十分に取れない状態で抗がん剤を投与され、1、2回の治療で無理と判断されて効くかどうかも分からないうちに“ギブアップ”となってしまった患者をたくさん見てきました。