原発不明がんの治療薬が世界初の承認 治療はどう変わるのか
また、既治療例の病勢制御率(完全奏効・部分奏効・腫瘍の大きさが変化しない安定の合計)は53.3%、無増悪生存期間の中央値は4カ月、全生存期間の中央値は15.9カ月。前述の通り、原発不明がんは一般的に予後不良であり、生存期間の中央値は6~9カ月と報告されているので、かなり延びている。
今後、原発不明がんの治療で一層重要となってくるのは、予後良好群か予後不良群かを速やかに判断し、治療を開始すること。原発巣の見極めに要する期間をガイドラインでは1カ月程度をめどとすべきとしている。
こんな不幸なケースがある。70歳男性で食欲不振、疲労感、体重の著しい減少からクリニックを受診。胸部レントゲンで肺に多発腫瘤影が見られ、呼吸器内科を紹介された。
呼吸器内科医は転移性の肺腫瘍と診断。しかし検索しても原発巣が見つからなかった。PET-CTで膵臓に異常集積があり、男性は紹介された消化器内科へ。
消化器内科医は検索をしたものの膵臓に原発巣を確認できず、この時点で2カ月が経過。患者は体力低下で治療意欲も低下。これ以上の検査はされたくないと中川医師の腫瘍内科を受診。原発不明がんと診断されたが、治療開始に適したタイミングは過ぎていた。