「一生飲まなきゃいけない薬はない」 高齢者の薬の正しい飲み方とやめ方 在宅医療の名医が語る
たとえば、血圧や糖尿病の症状は生活習慣によって大きく変わる。遺伝性の高血圧や他の疾患から起因する心不全症状が土台にあったとしても、食生活を整えることで血圧を一定の安定した状態に保つことは可能だ。少なくとも薬の減量につなげることはできる。
逆に食生活の変化や元々の病気の状態の変化に気づかずに医師が漫然と薬を出し続け、それを漫然と患者が服薬し続けると、不必要に「血圧を下げ続けている」状態になることもあるという。
「実際、高齢者が降圧薬や利尿剤により、日々の状態や家庭血圧を確認されないままに漫然と血圧が下げられることによって、めまいやふらつき、脱水症状などにつながることもあります。在宅診療が介入し、血圧の薬を減らしてあげるだけでふらつきがなくなったり、活気が出て食欲や行動意欲が回復することもあるのです」
たとえば糖尿病に対しても、若い頃から糖尿病治療薬を飲んでいる人が家や病院でしっかりと血糖値を確認しないまま漫然と薬を飲み続け、低血糖で病院に搬送されるケースも少なくないという。
加齢に伴う変化や他の病気が合併することで食生活が根本的に変化しているにもかかわらず、診察している医師が「糖尿病の専門ではない」という理由で血液検査を十分に確認しないまま、元々飲んでいた薬を継続してしまうケースもある。