「聞こえ」の悪さは、孤立・うつ病・認知症のリスクを高める
若者の聴力低下にWHOが警鐘
加齢による「聞こえ」の悪さは、コミュニケーション能力の低下につながり、やがては社会的な孤立、うつ病、認知症のリスクを高めます。医学誌「ランセット」に掲載された論文では、認知症の発症リスクを40%下げる12の危険因子が紹介されており、その中でも難聴が最も高い割合を占めていました。
耳年齢チェックをやると痛感すると思うのですが、「聞こえ」の悪さは、自分が考えている以上かもしれません。
さらに、日常生活で<表>のような経験をしたことがあれば、あるいは、親や配偶者に該当するようなら、耳鼻咽喉科を受診すべき。そして必要に応じて、補聴器を装着すべきです。
近年、WHO(世界保健機関)が警鐘を鳴らしているのは、若い人の聴力低下です。
2010年の報告で中~高所得国の10歳代の約半数が不適切な音量で携帯音楽プレーヤーを使用しており、15年には世界で11億人の若者が携帯音楽プレーヤーなどの不適切な使用で難聴の危険にさらされていると報告しています。
携帯音楽プレーヤーやスマートフォンで音楽を大音量で聴く習慣が5年以上継続すると、一時的または永続的に高音周域の難聴になるともいわれています。
22年、順天堂大学医学部耳鼻咽喉科学講座・リハビリテーション室のグループがこんな研究結果を発表しました。それは、「地下鉄騒音下でイヤホンを用いた音楽聴取によって難聴リスクが高まる」というもの。
研究では聴力が正常な成人23人を対象に、4種類のイヤホン(耳置き型、ヘッドホン、インサート型、ノイズキャンセリング機能付きインサート型)を用いて、音の大きさの調整は各人に任せ、ポップスとクラシック音楽を聴いてもらいました。
すると地下鉄内では静寂下に比べて、「耳置き型」「ヘッドホン」「インサート型」で最適リスニングレベルが増加し、特に「耳置き型」「ヘッドホン」では、危険な音量レベル(85デシベル)以上となる場合もあったとのことです。一方、ノイズキャンセリング機能付きインサート型のイヤホンでは安全音量(75デシベル)以下でした。
研究グループは「(地下鉄内のような)騒音環境下では、ノイズキャンセリング機能によって難聴リスクが回避できる」としています。
■耳鼻咽喉科を受診すべき項目
・会話の中で、聞き間違いが多くなった
・後ろから呼ばれると、気づかないことがある
・大勢の人がいるところで、言葉がよく聞き取れない
・電子レンジや体温計などの電子音が聞こえにくい
・家族にテレビの音量や電話の話し声が大きいと言われる