裸眼1.0未満の小学生38%で過去最多…急増する子供の近視は「レッドライト治療法」で抑え込む
子供の近視が急増している。文科省の調査によると、2022年度における裸眼視力が1.0未満の小学生の割合は約38%で、過去最多を更新したという。対処法はあるのか? 「経堂こうづき眼科」院長の上月直之氏に聞いた。
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近視は、何らかの原因で眼球の奥行き(眼軸)が本来よりも楕円形に伸びてピントが合わなくなり、遠くが見えにくくなる状態だ。遺伝的要因と環境的要因があり、近年はスマートフォンの普及や学校でのタブレット端末の導入により、物を手元で見続ける近見作業の増加が原因と考えられている。
「外遊びやスポーツといった屋外活動時間の減少も子供の近視が増加している大きな要因のひとつと言えます。太陽光に含まれる『レッドライト』の波長は、目の血流を促し近視を予防させることが指摘されています。子供が太陽光を浴びる機会が減っているのです」
学童期に発症した近視は20歳程度まで進行し、一度伸びた眼軸は元に戻らない。近視は、網膜剥離や緑内障だけでなく、さらに進行した強度近視になると近視性網脈絡膜萎縮など失明につながる疾患の発症リスクを高めることが知られている。
さらに超強度近視の場合、20~30代でもメガネをかけても視力が0.1までしか上がらないといった視力障害を引き起こす危険性もあるため、近視抑制治療を念頭に入れるべきだ。
「近視であれば視力を矯正するためにメガネやコンタクトレンズが使われますが、あくまでも見え方を向上させる目的であって、近視そのものの進行を防げるわけではありません。近年主流なのが、就寝時に専用のコンタクトレンズを装着する『オルソケラトロジー治療』や、低濃度アトロピンを含む『マイオピン点眼薬』です。近視の進行予防に有効とされ、多くの眼科で処方されています。そんな中、新たな治療法として注目を集めているのが『レッドライト治療法』です」
■専用の機械で1回3分を1日2回、週5日のぞき込むだけ
2014年、650ナノメートルの長波長の赤色光が眼軸の過剰な伸長を抑制させ、近視の進行を抑える効果を持つと中国で発見された。それをもとに開発されたのがレッドライト治療法だ。
「眼軸が前後に伸びると眼球の奥に張っている強膜は薄くなり血流が悪化します。低酸素状態になった強膜にレッドライトを当てると、血流が改善されて眼軸の伸びが抑制される仕組みです。21年にはアメリカ眼科学会雑誌で近視の予防効果が発表され、日本では22年から東京医科歯科大学で子供を対象にした臨床研究が進められています」
レッドライト治療法は至って簡単で、病院で貸与された専用の機械で1回3分を1日2回、週5日のぞき込むだけ。1台につき5人まで使用が認められていることから、プログラムを設定すれば姉妹兄弟間での共有も可能だという。
経堂こうづき眼科では、近視と診断された6~16歳を対象に治療が実施されている。
「ある研究では、決められた回数と時間を守って治療を行った場合、そうでなかった人に比べて1年での近視の進行を約90%抑制できると報告されています。ただ、一時的な副作用として、照射後にまぶしさやギラギラとした閃光盲、残像が現れるケースがあり、これまで中国で1例のみ、治療後に網膜障害を引き起こした症例があります。まぶしさや残像が残る場合には3分間目を閉じて、それでも5分以上続くようであれば眼科を受診してください」
斜視や瞳孔散大、左右どちらかの目に視機能異常があったり、全身疾患や遺伝性網脈絡膜疾患の家族歴などがある場合には、レッドライトを使用できない。治療を希望する場合は眼科医に相談するといい。
現在、国内でのレッドライト治療法は自由診療だ。経堂こうづき眼科では、適応検査料とデバイス貸与料、定期検査料を含んだ初年度の治療費は約18万円。
子供の目を守るためにも、検討してみてはどうか。