認知症で問題行動を起こす患者にはどんな対応をするのか
こうした状況から、患者さんは上肢を抑制された入院生活をされていました。そのためか、リハビリ拒否や介護拒否もあり、前の病院ではさじを投げられていたのです。ご家族も入院相談に来られた時に、「毎晩、錯乱して病院に迷惑をかけているそうです。なんとかお願いします。すべてお任せしますので、よろしくお願いいたします」と深々と頭を下げて帰られました。
■「嫌だ」と感じる行為や表情をしてはいけない
私自身、かつて父親の介護で同じ思いを経験したので、なんとか穏やかな状態になってもらいたいと強く思いました。看護ケアを行う家族やスタッフから“嫌われる状態”では、毎日が不幸せになってしまいます。看護ケアされる側も、看護ケアする側も、気持ちよく毎日を継続できる状態まで、患者さんの感情障害と精神障害を治療することが大切になります。
当院に入院された日、患者さんは失語症のため言葉による意思の疎通はとれませんでしたが、目で挨拶ができて、笑みを少し浮かべられたので、「治療はできる」と前向きな判断ができました。さじを投げる認知症ではないのです。