(19)このままでは共倒れ…解決の糸口がまったく見えない
別の叔母から電話がかかってきた。「あなたのお母さんが今年初め頃にうつっぽい状態になって、私たちに毎日のように電話をかけまくっていたのを覚えてる? その頃にも、彼女は脳梗塞で一度倒れたのよ。あなたのお父さんのケガを手当てするために病院に連れていったもうひとりの叔母さんも、実は家に病人を抱えている。私たちにも限界がある。東京にいて何もしないという態度をちょっと考え直してくれないか」というのだ。
行き詰まった。ありがたく感謝をしていたが、叔母たちはもう頼れない。父も外部サポートを拒否している。しかもコロナ禍で、東京の人間は決して接触してはならぬというお達しが、関係する各医療機関から言い渡されていた。もし帰省して接触すると、父は医療にかかれなくなるかもしれない。すべてが一気に押し寄せてきて、私はついにパニックになった。
このままでは、父も私も共倒れになってしまうかもしれない。だが、父に外部サポートを受け入れるようにするにはどう説得すればいいのか。母に必要なものを届けるにはどうすればいいのか。 解決の糸口が見えないまま、時間だけが過ぎていった。 (つづく)
▽如月サラ エッセイスト。東京で猫5匹と暮らす。認知症の熊本の母親を遠距離介護中。著書に父親の孤独死の顛末をつづった「父がひとりで死んでいた」。