訪問診療という「外部の目」がフレイルを食い止める
以前は美容院で丁寧にケアしていた髪も手入れをしなくなり、ほとんどが白髪に変わっていました。茶の間のこたつにも長く座っていられず、すぐにソファに横たわってしまうような状態でした。
ご家族は筋力低下を心配し、家の中でも動いてもらおうと、洗濯物をたたむよう頼みましたが、たたみ方が分からないのか、洗濯物をただ眺めるばかりでした。
しかし、私たちが診察で話をするときだけは少し元気を取り戻し、たまに帰ってくるお孫さんたちと触れ合うことを楽しみにしていると語ってくださいました。
このように、高齢者にうつ症状が現れると、考えることがおっくうになり、集中力も低下して、認知症と区別がつきにくくなることがあります。
なお、うつ病は、気分の高揚や喜びの感情の喪失、自責感といった精神症状に加え、全身の倦怠感や体重の増減といった身体症状を伴う病気であり、しばしば認知症の前触れとしても知られています。
また、もともと活動量の少ない高齢者がうつを発症してさらに動かなくなると、身体機能の低下は一気に進みます。筋力も急速に落ち、要介護状態の一歩手前である「身体的フレイル」の進行が深刻な問題となるのです。