“大谷騒動”を経済学で考えると…「囚人のジレンマ」を思い出す
「一平さん、ここは罪を全部、かぶってください!」
ショウヘイがそう言ったかどうかは分からない。しかし、これまでの野球人生のなかで、彼が最大のピンチを迎えていることは間違いなさそうだ。だって、1000億円もの金が、一瞬にしてパーになりかねないからである。
日本人のファンの多くは翔平が「無実」であることを信じている。逆に大金を盗まれた最大の被害者、彼に同情する声も少なくない。
一方、現地アメリカでは厳しい見方をする人もいる。「なぜ、一平は翔平の口座にアクセスできたのか?」「一緒に違法業者に送金したのではないか?」
こういった状況を目の当たりにすると、経済学に心得があるものならば、すぐに「囚人のジレンマ」を思い出す。誤解を避けるために言うが、彼らが「囚人」という意味ではない。経済学のゲーム理論の「単なる名称」である。
その内容は、お互いに「合理的な選択」をしたにもかかわらず、結果的に「不幸」を引き寄せてしまう、といったものだ。囚人がともに「黙秘」すれば2年の刑期で済むのに、個人の利益を追求(自白を選択)してしまうと、2人とも10年の刑が確定してしまう--そういったものである。