大相撲7月場所“裏情報” 協会を襲う大減収と力士給与カット
協会「50億円」規模大減収の余波
19日初日を迎える大相撲7月場所(東京・両国国技館)。コロナ禍で5月場所が中止となり、実に4カ月ぶりとなる開催は1日最大2500人の有観客で行われる。開催を直前に控える舞台裏では、さまざまな情報が飛び交っている。
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7月場所について相撲協会はかねて、無観客での開催を検討していたが、開幕6日前の13日に1日の総観客数を2500人に制限し、有観客開催することを決めた。
協会は観客を入れるに当たり、新型コロナウイルス感染対策のガイドラインを作成、専門家にも助言を仰ぎ、感染予防策を徹底するとしている。しかし、東京を中心に全国各地でコロナの新規感染者が増加。クラスターが懸念される屋内での開催ということもあり、大きなリスクを抱えての場所になる。
角界関係者によれば、協会が有観客開催に舵を切ったのは、財政的な問題も大きいという。
大相撲はコロナ禍により、3月春場所は無観客開催、5月場所は中止に追い込まれた。例年通りでいくと、1場所当たりの入場料などの収入は約10億円だから、すでに20億円の減収が確定。5月場所は中止になったため、4億~5億円といわれるNHKの放映権料も入ってこない。
さらに、本場所と並んで協会の大きな収入源である秋巡業、冬巡業の中止がすでに決定。これで7月場所も無観客となれば、40億円規模の収入が消えることになる。今場所の観客数は、両国国技館の最大収容人数1・1万人の4分の1以下にとどまり、1億~2億円程度の収入になるとみられるが、少しでも利益を得たいというわけだ。
■八百長発覚11年度は49億円の赤字
相撲協会が公表している2019年度の「収支報告等」によると、収入124億円(数字は1000万円単位を切り上げ)に対し、支出は120億円。収入は興行収入が106億円を占め、最終的な利益は2億円だった。一方で、相撲協会は473億円もの純資産を抱えているが、大半は特定資産であり、銀行預金などの流動資産は35億円にとどまる。自由に動かせる資金は決して多くない。
「相撲協会は、10~11年に野球賭博と八百長問題が立て続けに発覚したことで、春場所や巡業が中止になり、夏場所も無料開放。春巡業の勧進元へ中止の損失補填をした上に、ファン離れも加速した。その結果、11年度は過去最大の49億円の赤字が出た。コロナ禍に見舞われた今年は、9月場所、11月場所も満員の観客を入れられる保証はない。11年度以上のマイナスを覚悟しなければならない。11年当時は特定資産を30億円以上取り崩すなどして対処したが、それにも限界がある。公益財団法人である以上、金の使い方はナーバスにならざるを得ない」(角界関係者)
収入減によって影響しかねないのが、力士たちの給料だ。
19年度の力士給与の総額は約40億円。2018年には観客動員の好調もあり、18年ぶりに昇給したが、前出の角界関係者は「損失額によっては、給与が一律カットされる可能性もゼロではない」と言う。
さらに、部屋に支給される部屋維持費(力士1人当たり11・5万円)や稽古場維持費(同4・5万円)も削減されるようなら、部屋の運営にも支障をきたす。さる放送関係者は、「給与や維持費を維持しつつ、マイナスを補填、収益を増やすためには、地方巡業や花相撲を増やすしかないでしょう」と言う。
なんとか有観客での7月場所開催にこぎつけたものの、大変なのはこれからだ。