大坂なおみ全仏2回戦棄権表明 会見拒否させた“黒幕”は誰?

公開日: 更新日:

 いまから2年前、2019年の全米オープンでのことだ。

 大坂は女子シングルス3回戦で、当時15歳の新鋭・ガウフに圧勝。大坂は試合後、泣きながらコートを去ろうとしていた彼女に、「シャワーを浴びながら泣くよりいいから」と、コート上で一緒にインタビューを受けることを提案。ガウフは涙を流しながら大坂とインタビューに応じ、「試合後の彼女(大坂)は真のアスリートだということを証明した」とコメントした。傷心のガウフをインタビューに引っ張り出した大坂のこのエピソードは美談として取り上げられた。

 そんな大坂が、当時とは正反対の態度を取って波紋を呼んでいる。全仏オープンテニスを前に試合後の会見を拒否すると公言。「アスリートの心の健康状態が無視されている」とコメントし、30日の1回戦に勝った試合後はコート上でのインタビューに応じただけで会見を拒否。全仏の主催者は大会規定に違反すると日本円で約165万円の罰金を科したと発表し、4大大会主催者は今後も会見を拒み続けた場合は今大会の失格処分、4大大会の出場停止処分を科す可能性を通告した。スポーツライターの武田薫氏がこう言う。

■スマホをいじって

「プロテニス界はツアーがあり、だからこそ大坂の稼いだ60億円も成り立っている。試合後の会見はそのツアーに参加する選手に課せられた義務です。スマホをいじって嫌な質問を無視する選手がいれば、嫌な質問を『ネクスト!』と打ち切るのもいる。要は答えたくない質問には答えなければよいのだし、あらかじめ司会者に頼んで質問はテニスに関すること以外受け付けないようにすることもできる。なのにアスリートの心の健康状態が無視されていると、会見を拒否するのは理解に苦しみます」

 ガウフとの美談から2年が経ち、その間、昨年の全米、年明けの全豪と勝って目下、4大大会2連勝中。年収も女子アスリートではダントツの60億円と膨れ上がり、彼女の中に驕りが生じたとしても不思議はない。

 昨年の全米オープンの前哨戦であるウエスタン・アンド・サザン・オープンはベスト4入りするも、ウィスコンシン州の黒人銃撃事件に抗議する意味で翌日の準決勝を棄権。主催者が大坂の意をくんだかのように日程を1日延期、大坂が棄権を撤回したこともあった。

レディーガガにビヨンセ

 米国在住のさるマスコミ関係者が、「そういえばアメリカではこんなこともありました」と、こう続ける。

「5月はメンタルヘルス意識向上月間です。レディー・ガガビヨンセら30人のセレブの精神的につらい体験を特集した記事がサイトにアップされたほど。例えばビヨンセは最初のグループ解散後、拒食症になって閉じこもった経験を振り返っています。年収60億円の大坂も立派なセレブですからね。そういえば自分もそんなことがあった、精神面は大切だと勘違いしたのかもしれません」

 だとしても、言いたいことがあるならそれこそ試合後の会見で言えばいいし、わざわざ選手の義務である会見拒否まで宣言して自分から騒ぎを大きくする必要があるとも思えない。

■テニス界を知らない人

「昨年の全米は勝つたびに黒人犠牲者の名前入りの黒いマスクをして登場した。決勝まで7人の名前が入った7つのマスクをして、世間の共感を呼んだ。彼女がひとりで考えたとは思えないし、今回のことも含めて大坂にはだれか裏で知恵を貸している人がいるのかもしれません。メジャーを4つ勝って多少、天狗になっている面はあるにせよ、ガウフをインタビューさせた大坂と、いまの大坂はまるで別人ですから」と、放送関係者がこう続ける。

「ただ、今回の会見拒否は、マスクと違って共感は得られない。良くも悪くも女子アスリートのオピニオンリーダー的な地位を狙ったのかもしれませんけど、マイナスイメージしかない。会見拒否に対する波紋の大きさを考えたら、大坂に知恵を付けているのは、プロテニス界のことをまったく知らない人ですよ。友人か知人か親戚か、あるいは恋人か……。恋人のラッパー、コーデーは昨年7月に警察官による黒人殺害事件の抗議行動で逮捕されるなど、社会問題に関して積極的に活動していますが……」

 大阪はこの日、自身のSNSで、「大会や他の選手、私自身にとって自分が撤退することが最善だと思う」と、棄権を表明。

 記者会見を拒否したことに関して「いつもインタビューに応じて、ベストな回答をするのは大きなストレスです。(大会会場の)パリでは傷つきやすい状態で不安を感じていたので、セルフケアをしてスキップした方がいいと思いました」と、あらためて説明した。

 長文のメッセージでは「2018年の全米オープンから長い間、気分が落ち込むことがあり、それに対処するのに苦労しました」とうつ病だったことも明かした。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • その他のアクセスランキング

  1. 1
    男子バレー日本代表エース高橋藍の素顔 ネーションズリーグ無傷の8連勝を牽引

    男子バレー日本代表エース高橋藍の素顔 ネーションズリーグ無傷の8連勝を牽引

  2. 2
    立教大・上野裕一郎駅伝監督が電撃解任…女子部員との“禁断不倫”騒動で失う「名声」「仕事」「家庭」

    立教大・上野裕一郎駅伝監督が電撃解任…女子部員との“禁断不倫”騒動で失う「名声」「仕事」「家庭」

  3. 3
    男子バレー指揮官が絶対に避けたい“アテネの二の舞”…五輪直前に金候補と強化試合を組んだ意図

    男子バレー指揮官が絶対に避けたい“アテネの二の舞”…五輪直前に金候補と強化試合を組んだ意図

  4. 4
    女子レスリング53kg級「新・霊長類最強の女」藤波朱理は大舞台を制し“飲酒解禁”なるか

    女子レスリング53kg級「新・霊長類最強の女」藤波朱理は大舞台を制し“飲酒解禁”なるか

  5. 5
    出雲駅伝でドーピング違反が判明…大学駅伝界に忍び寄る禁止薬物の影に「箱根」が呑まれる日

    出雲駅伝でドーピング違反が判明…大学駅伝界に忍び寄る禁止薬物の影に「箱根」が呑まれる日

  1. 6
    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

    羽生結弦に「妻を守り切れなかった男」のレッテル…“完全無欠のプリンス”を見る目にも変化が

  2. 7
    “スーパー中学生”ドルーリー朱瑛里に海外流出を危惧する声…弁護士を通じ異例の要請

    “スーパー中学生”ドルーリー朱瑛里に海外流出を危惧する声…弁護士を通じ異例の要請

  3. 8
    女子レスリング68kg級 慶大ガール尾崎野乃香はパワータイプを相手に持ち味のスピードを生かせるか

    女子レスリング68kg級 慶大ガール尾崎野乃香はパワータイプを相手に持ち味のスピードを生かせるか

  4. 9
    女子レスリング50kg級 須崎優衣の連覇を脅かす「謎に包まれた北朝鮮選手」「背後に迫る中国選手」

    女子レスリング50kg級 須崎優衣の連覇を脅かす「謎に包まれた北朝鮮選手」「背後に迫る中国選手」

  5. 10
    新生ラグビー日本に「ファンタジスタ山沢拓也」という希望 大敗イングランド戦で大歓声浴びる

    新生ラグビー日本に「ファンタジスタ山沢拓也」という希望 大敗イングランド戦で大歓声浴びる

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

  2. 2
    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

  3. 3
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 4
    芸能事務所の社長には「三浦友和のNGみたいな子はいらないのよ」と言われた

    芸能事務所の社長には「三浦友和のNGみたいな子はいらないのよ」と言われた会員限定記事

  5. 5
    巨人・坂本勇人「一塁手で一軍復帰」に現実味…本人、チームともメリット盛りだくさん

    巨人・坂本勇人「一塁手で一軍復帰」に現実味…本人、チームともメリット盛りだくさん

  1. 6
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  2. 7
    女優・沢田雅美さん「渡鬼」降板報道の真相で「本が一冊書けてしまうかな(笑)」

    女優・沢田雅美さん「渡鬼」降板報道の真相で「本が一冊書けてしまうかな(笑)」

  3. 8
    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

  4. 9
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  5. 10
    ヒデとロザンナ(6)8歳年上の東洋人にロザンナは「やばい、運命の人だわ」と直感し…

    ヒデとロザンナ(6)8歳年上の東洋人にロザンナは「やばい、運命の人だわ」と直感し…会員限定記事