中田翔の移籍初本塁打もなぜ美談に? 巨人にノーと言えないプロ球界の体質を重鎮2人が痛烈批判
軋轢を避けるコミッショナー
まったくだ。今回の中田の移籍や、巨人の中田の起用法に関して釈然としないのは、野崎氏や井箟氏に限らない。
同僚を殴った中田は去る11日、統一選手契約書第17条(模範行為)違反により、野球協約第60条(1)に該当すると認定され、一、二軍全試合の出場停止処分に。「出場停止選手」としてコミッショナー公示された。つまり「出場停止選手」であることはプロ野球界全体が認知したということだ。
「プロ野球界のトップであるコミッショナーはルール上、問題なくても道義的におかしい、すぐに出場停止処分を取り消すのは野球界としていかがなものかと声を上げるべきですよ。それをしないのは、いまだコミッショナーが巨人と軋轢を起こしたくないというスタンスだからではないか」とは前出の野崎氏。
「コミッショナーはもちろん、セの5球団はなぜ黙っているのか」と、前出の井箟氏がこう続ける。
「統一契約書は模範行為をうたっている。中田はそれに反する行為をしたからこそ厳しい処分を受けた。プロ野球選手が人々の手本にならなきゃならないのであれば、ユニホームが変わるなり処分をなかったことにするのは道義的におかしいわけで、コミッショナーには説明責任がある。それをしないのは巨人と事を構えたくないからです。他の5球団は結局、触らぬ神にたたりなしという事なかれ主義でしょう。わたしがオリックスの代表だったとき、何か事件が起きても、当事者以外の球団の代表者たちは、あなたたちの問題だからあなたたちで何とかしてよという態度でした。球団社長なり代表は本社からの出向が多く、自分の任期中にややこしい問題はできれば起こしたくないのですよ」
プロ野球界全体が中田の移籍後初本塁打を黙認するのであれば、これはもう、終わりの始まりではないか――。