フェンシング男子エペ団体「金」見延和靖<2>選手村のジムで起きた大逆転劇、包丁研ぎで無心になる
調子の波を上げるため、約5年前から続けていることがある。16年、出身である福井県越前市のふるさと大使に就任。このとき手にした福井の伝統工芸「越前打刃物」の包丁を研ぐことがメンタルコントロールに一役買っている。
「僕の場合、体づくりや技術づくりの前に、心づくりから始めるので、心を整えるために包丁を研いでいます。目的はただ無心になること。料理で使うものとは別で、『研ぐ専用』の包丁です。周囲には『家の包丁が切れなくなったら研いであげる』と言っているんですけど、来てくれたのは佐藤希望選手だけ。佐藤さんは高校の先輩ですから、『研いでおいて~』っていう軽い感じでした(笑い)」
5年前にはエペ個人でリオ五輪に出場。平時のオリンピックは「選手村のあちこちでお祭り騒ぎをしているという雰囲気があった」というが、今回は海外選手の自粛ムードを肌で感じた。
「外国の方もきちんと状況を理解して、おとなしくしているんだなと思いましたね。それでも楽しもうという雰囲気もあって、おそらくアイルランドのチームだと思うんですが、夕飯から部屋に戻るとき、向かい側の棟から音楽が聞こえてくるなあと思って、見ると、部屋のベランダから顔を出して、みんなで合唱していた。普段だったら集まってパーティーしているのに、今回しかないような不思議な盛り上がり方でしたね」