<8>ロシアスケーターを支える「妊産婦専用プログラム」日本も見習うべき
■ロシア選手から頼まれた味噌1キロの結末
重い荷物といえば、2006年トリノ五輪のときに持って行った味噌は1キロあった。自分用ではない。ロシアのスベトラーナ・ジュロワという選手に「ミソスープが飲みたい」と頼まれていたからだ。彼女とは同い年。長野五輪にも出場していてトップを争うひとりだった。1キロのパック味噌を持って選手村で渡すと、とても喜んでいた。
その後、彼女は500メートルで金メダルを獲得。私は4位だった。「おめでとう!」と言ったついでに「ミソスープのおかげだね! ってことは、金メダルは私のおかげだよね? よ~く覚えといてよ!」と話したら、「イエス、アイライクミソスープ!」と返ってきた。
彼女はママさんアスリート。出産後、さらに成績を伸ばしていった選手だった。独身の頃は好奇心旺盛で落ち着きがないタイプ。試合では時折ヘマをすることがあった。それが子供を産んで一転、冷静なレース運びができるようになって驚いたのを覚えている。
ロシアでは、子供を持つアスリートへのサポート体制も充実。出産後に体形や体調が戻らずに苦労する選手が多いが、ロシアは協会が妊産婦がアスリートに戻れるトレーニングメニューやプログラムを作っている。彼女も「そういうシステムがあったから安心してトレーニングに臨めた」と話していた。日本のシステムも変わらなければいけない。